至高の輝き (那岐の師匠独白)


ここを彷徨うようになって、どれほどになるのか。
長い時のようで、早く過ぎ去ったようで。

しかし、今でも思い出すまでもなく思い浮かべられる。

彷徨う前の記憶。
帰れない事に対する後悔と懺悔。

悔やむことしかできない己の身には、黄泉で彷徨うことも相応しいことのように感じられた。

まだ小さなあの子を残す事になってしまって。

どうしているだろうかと考える事しか出来ない事がまた恨めしい。

少しは笑えているだろうか。
少しは幸せを感じているだろうか。
少しは暖かさを感じているだろうか。

葦舟で流された赤子。
中つ国の王家では忌み嫌われる容姿と、強い霊力。

刻み付けられた恐怖に怯えて、心が開けず。
心が開けず怯えるあまり、自身を嘆き。
その言の葉は呪となって自身を呪っていく。
そして更に、恐怖が刻み付けられていく。

それも、繊細で人を思う事が出来る故。

そんな子が、成長していくのを見るのは何よりも幸せで、楽しかった。
それを伝えられぬまま、ここで彷徨う自身を呪いたくなる。

那岐は私にとって何よりの光だった。

今も、昔も…。

中つ国で忌み嫌われてしまう太陽のように明るい姿が、たまに笑った時の笑顔が、この光差さぬ黄泉で私だけの光となる。

だからこそ、まだ大丈夫。
まだ、彷徨える。

いつか、この思いを伝える事が出来る日まで。
けれど、この黄泉では決して出会うことなどないように。

那岐、お前に1つだけ伝わればいい。
山とある言葉の中で、ただ1つだけ。

『お前と過ごす時間のすべてが、私にとってかけがえのない幸せだった』


* back *


2作目からすでに那千要素ない創作で…(反省)
那岐の書の黄泉でのシーンをやっていた時に思いついて書き殴った代物です…
師匠と那岐の関係が大好きだったり
で、那岐の幸せを願う師匠から見て、那岐の側にいてほしいと望んだのが千尋のような存在って事で…
やっぱり那千前提のつもりなのですが、フォローになってないですね…(再反省)