キスの格言 (将望)



男とは明らかに違う細い腰を抱きしめて、大人しくなるのを待つ。
膝に横座りにさせるだけじゃまだまだ。
本当の目的は、まだ、これから…。





「望美」
ようやく落ち着いてきた彼女に声をかける。
名前で呼べば、大人しく従ってくれるのを知っているから。

肩に手を滑らせ、むき出しの二の腕に口付けた。
「ひゃっ」
驚いた望美が微かに身を強張らせる。

「望美。キス、してくれないか」
「ちょっ!将臣くん!?」
真っ赤な顔で慌てる様子をじっと見つめる。
すると、観念したように手を伸ばしてくる。
近づいてくる吐息に目を閉じれば、そっと瞼にキスが落ちる。

「足りない」
慣れない所為で不安げに揺れる瞳に映る自分の目が、欲に染まっているのがよくわかる。
そんなもの見なくてもわかっていた。
理性の糸がどんどん細くなっていく事に浮かぶのは苦笑。
抑えきれない衝動と、腕へのキスは欲望の証。

「そこじゃ面白くないだろ?」
瞼じゃ物足りない。
籠められる意味だって物足りなすぎるから。
瞼へのキスは憧れの証。

頬にある手をとって、掌に口付ける。
そのままペロリと掌を舐めると、彼女は慌てて手を引っ込めた。
更に赤くなった表情。
可愛くて、でもそれじゃ物足りない。

その逃げる手をとって、指先に舌を這わせる。
性感帯の宝庫だという指先に、掌へのキスは懇願。

「た、足りないって言われたって…」
「キスだぜ?望美」
「だ、だけど…」
困ったように視線を逸らされてしまう。
これじゃあ、面白くない。

頼むのはやめにして、リップオンの軽い口付けを何度も落とす。
恋人たちの交わすキスは愛情の証。
くすぐったそうに身を捩る彼女を押さえつける。
唇を離して表情を伺えば、少し嬉しそうに微笑む彼女。

「将臣くん?」
突然止んだキスに、不思議そうに首をかしげる彼女の唇を親指でなぞってから、口付けを深くした。

「…っぁ、まっ……んん…っ」
抵抗の声なんて聞こえない。
聞く耳を持つ気もあまりない。

もっともっと深くする。
息ができないくらいまで。
もっと望みのままにあるように。
何も考えられなくなるまで。

舌を絡めて、その水音で聴覚的な刺激を加えて。
太股に掌を滑らせて、更に煽ってやる。

「…ふっ……んんっ…」
艶の出てきた彼女の声に、心臓が一際大きく鳴った気がした。
でも、まだまだ前戯。
まだ、足りない。

「望美、キスしてくれ」
欲の生まれた瞳の彼女に頼む。
素直に、差し出した掌にキスをくれる。

「もっと」
その言葉に、唇にキスをくれた。
想いが籠もった口付け。

なのに、まだ足りないと思ってる俺は、どこまで欲に落ちたのか。

「将臣くん、もっと…」
続きを要求する彼女に満足して、首筋に欲望の証である赤い痕を残してから。

狂気の沙汰に値する、胸元にも口付け痕を残して、あとはただ落ちていった。



* back *


…以前何かの影響で書いた話を手直しして、将望にしてみました…。
って、手直しと言うほど手直ししてないのですが…。
本当は拓珠でやりたかったのですが、とりあえず名前だけ変えてみたところ、拓磨よりも将臣っぽかったので
…全体的に、ノーコメントとさせてください…(恥)