予想内の予想外 (キョンハル前提、キョン・国木田・谷口トリオ・恋人、大学生設定)



「ったく、昨日の合コンはマジでハズレだったな」
「へぇ、それはご愁傷様」
「なんだ、国木田。そのあっさりとした対応は」
「はいはい」
大学に入っても続く人間関係を得られたという意味では、高校生活は有意義なものだったのだろう。

国木田がそんな事をぼんやりと考えながら、いつもの谷口らしい愚痴を聞きながら昼食でも食べようと2人で手近な店に入った瞬間見つけたもの。

「あれ?キョン。奇遇だね」
「おお、キョンじゃねーか」
見事にはもった声に、携帯を弄っていた顔が上がった。





「久しぶりだね、キョン」
「まぁ、学校違えばそう会わないのは当然だな」
あっさりした返事を返しつつ、キョンも久々に会う友人に対して携帯を仕舞った事で気持ちが読めるというもの。

「お前らは飯か?」
「そう。谷口に急に呼び出されたから何かと思ったら、昨日の合コンの愚痴」
「そりゃご愁傷様だな」
小さく笑ったその直後、
「…おまえら、ここに座るのか?」
キョンは僅かに驚いた様子で谷口たちを見た。

確かにキョンの向かいの席は空いていた。

「あ、ダメだった?」
キョンの反応に少しばかり驚きつつ、キョンの向かいの席に谷口と並んだ国木田も問い返す。

「いや、ダメとも言わんだろうが…」
やや躊躇した反応に、
「待ち合わせか?」
谷口は一瞬楽しそうに反応するも、すぐに表情を元に戻す。

それどころか呆れたように、
「お前、まだ涼宮に付き合ってやってんのかよ」
嘆息まで吐き出した。

「へぇ、待ち合わせ涼宮さんなんだ」
「なんでそうなる」
感心したような国木田の口調に、キョンの表情が僅かに険しくなる。

「だってほら、否定はしてないし」
的確な突っ込みに、キョンは更に表情を険しくさせてから、諦めたように息を吐いた。

間違いのない肯定の意味。

「ホント、お人よしだなキョン」
「余計なお世話だ」
「んな事に付き合ってやってたらもてねぇぞ。なんなら合コンでもセッティングしてやろうか?」
急に元気になった谷口がキョンに対して近づいた瞬間。

「あら、楽しそうな話ね」
降ってきた声に、キョンが硬直した。

「ハルヒ…」
ゆっくりとキョンが声のほうへと向けば、腕を組んで立つハルヒの姿。
長い髪を結い上げ、キョンの方へと視線を向けている。

「ああ、涼宮さん。久しぶり」
国木田の声にハルヒは僅かに視線を向けるも、変わらずキョンへと向いたまま。

「あんたが呼んだの?」
「たまたま出くわしたんだよ」
「で、合コンでもセッティングしてもらうわけ?」
「いかねえし…」
「あたしからのメールに気づかないくらいだものね」
ハルヒからの追究に冷や汗をかいていたキョンが慌てて携帯を見てみれば、着信のランプが光っている。

「あー…すまん」
素直に謝るも、ハルヒの姿勢が崩される事はなくてキョンは僅かに苦笑した。

「あいかわらず尻に敷かれてんだな」
「谷口は一度黙っとけ」
笑った谷口に対して言い切ると、キョンはハルヒへと向かい立ち上がった。

「合コンなんて行く気はまったくないし、こいつらと会ったのは本当に偶然だ。ほら、行くんだろ?」
そうしてハルヒの背を押して歩き出そうとしたキョンに、ハルヒは不満そうに顔を膨らませる。

その瞬間、眩しそうに目を細めた国木田がキョンたちを確認して…小さく笑みを浮かべた。

「涼宮さん」
ハルヒが呼ばれた声に不満顔のまま振り向けば、国木田が笑みを向けてくる。

「さっきのは本当に谷口の妄言だから、気にしないで。涼宮さんが来るって聞いてたのにここに座っちゃった僕たちが悪かったんだ。そういう事だから」
突然キョンのフォローをする国木田に、
「…そ、そう」
ハルヒは少し驚いた様子で返事だけをする。

「ねぇ、キョン。近々連絡くれるんでしょ?楽しみにしてるから」
「?…ああ」
そのままの勢いで話題はキョンへと飛び、キョンはよくわからないままに返事をし、
「ほら、どこか行くんだよね。いってらっしゃい」
「久々にあったのにすまんが、じゃあな」
国木田に送り出されるままにキョンはハルヒと共に店を出て行った。



その様子を見れる限りガラス越しに覗けば、ハルヒのご機嫌を取り繕いながら歩く2人の姿。

苦笑して謝って、髪に触れて笑って。
次の瞬間には楽しそうに歩き出す。

「なんだったんだ?あいつらは…」
隣で不思議そうにする谷口に、
「キョンって長い髪が好きなんだね」
国木田は誰に言うでもなくぽつりと呟く。

「はぁ?聞いた事ねえな」
「涼宮さんも綺麗になってたし、髪も伸びてたし」
「涼宮は黙ってさえいれば悪くはないんだろうけどな」
「でも、やっぱり予想通りといえば予想通りだけど、ちょっと予想外に早いかな?」
楽しそうに呟く国木田に、谷口はただ不思議そうな視線を送る。

「だから、何の話だ?」
「ん?僕たち3人の中だったら、一番早く結婚できるのはキョンだろうなぁって言う予想」
そして先程眩しさに目を引かれたもの、ハルヒの指に光る指輪とキョンの腕にある腕時計を思い出し、
「婚約して指輪と時計交換するなんて律儀だよね、2人とも」
「はぁ?!!」
ただひたすらに驚く谷口を尻目に、国木田はキョンたちが消えた方向へと笑みを浮かべた。

* back *


個人的に、この3人の中だったらなんだかんだ言いつつキョンが一番早く結婚しそうだなぁと
びっくりだけど、なんか納得しそうな感じで。
で、一番遅いのが谷口だと思うし、誰もが納得する年齢と言うかタイミングで結婚するのが国木田だと思う

…多分補足しないとわからないお話で申し訳ないんですが、キョンハル婚約中です
学生結婚でもいいじゃないか!と(笑)
で、国木田がいう近々連絡っていうのは、「結婚式には呼んでね」って意味で言ってます
キョンが気付いているかはおいておいて(笑)

さりげなく、過去作品の「七夕の再会」とリンクしているような気もします