予測不能 (古泉独白)



目の前が恐怖で覆われた。
恐ろしくて、恐ろしくて仕方がなかった。

…こんな『力』、わかってしまう自分すら憎かった。

だから組織が存在した時、それがどんな新興宗教でも信仰してしまうかもしれないくらいに、救われた…。



それから力を理解はしても…納得できるものとは別で。
自分に白羽の矢が突き刺さった事が、憎いくらいだった。

どうして自分だけ。
どうして自分がこんな目に。

1人じゃないから、そこに救いはある?

…それは嘘だ。

一点の救いも、そこにはない。

どうして俺じゃなきゃいけなかったのかすら、納得いかない。


…正直、どれだけ憎んだか、わからない。
涼宮ハルヒという存在を。

…たとえそれが神だとしても。


けれど事態が一変して。
同い年というだけの理由で転校までさせられて。

『僕』は『神』と直接対面した。







「あら、古泉君じゃない!」
かけられた声に振り向けば、まぶしいくらいに輝く笑みと出会う。

「よぉ」
「おや、お揃いでしたか」
すっかり癖になった…身についた言葉と笑顔。

「お前こそそんなところで何をしてるんだ?」
「掃除当番なのですよ」
「ここの掃除面倒よね…」
彼の問いに答えれば、自身の時を思い出したのか涼宮さんがふと表情を沈めて呟く。

それもつかの間。

「それより古泉君!」
再び浮かんだ笑顔に、答えを予測する。

与えられた、役割。

「この前見せてくれたミステリー、面白かったわ!みくるちゃんの映画と平行して、今度は古泉君脚本の話を撮ろうかしら!」
「それは光栄です」
どんな事でも驚く事無く認証するのが、副団長の役割。

「おい、古泉」
その言葉に眉をひそめる彼に、苦笑した。

「大丈夫ですよ。きっと、またあなたがどうにかしてくれるでしょう?」
「俺任せかよ」
「ええ、適任ですから」
そうして笑えば、さらに顔をしかめる。

「あ、みなさんここにいたんですね」
「……」
そんな場に、さらに声が加わった。

小さく笑みを浮かべて会釈してくる未来人に、視線を合わせるだけの宇宙人。

「こんにちは、朝比奈さん、長門さん」
SOS団が揃う。

…力に気づいた時、ここに転校する羽目になった時。

俺は今の僕を想像できただろうか。

…このSOS団を楽しく思う自分を。
自分の世界を守るため、ではなく、彼女と彼のため、SOS団のために彼に誓いを立てた自分を。

そう思うと、不意に笑いが浮かんでくる。

「なんだ、古泉気色悪い」
そうして不可解そうな表情を浮かべる彼に、
「いえ、世の中面白いことになるものだと思いまして」
素直に本心を一言呟くことにした。


* back *


今回はキョンハルものじゃないです。
なんていうか…古泉君独白?
SOS団のお話かなぁとか…
以前拍手で書いた長門さんと対だったのに、今の今まで封印されていました
完成に時間がかかりすぎた…
少し毛色の珍しい作品になったかなぁという気がしています