(消失設定・ハルヒ独白)
「キョン」
暗い病室。
いつまでも明けない夜。
…返事のない呼びかけ。
「キョン…」
静かに眠っている。
一定の寝息を立てて。
居眠りしている後ろ姿を見た事は何度もあるけど、こうして寝顔を見るのは数少ない。
…あの、夢の日以来?
「キョン」
軽く頬を叩いてみても、起きない。
あの時、夢の中では起きたのに。
手を繋いで、ワクワクするような学校を冒険したのに。
「バカキョン…」
呼んでも返事がない。
階段から落ちたあの瞬間から。
…ううん、部室を出た時からかもしれない。
声を聞いたのは、それが最後。
もし、側にいたら、変わったのかな。
もっと側にいて、注意を払っていたのなら。
後ろにいないでもっと側を歩かせていたら。
こんな風に眠っているのを見ずにすんだのかな。
「キョン」
返事を求めるために、呼ぶ。
「キョン」
『なんだ、ハルヒ』
少し不満そうに、それでも返してくれる声を求める。
頭をかきながら、振り向いてくれる視線を待つ。
なのに、返ってくるのは呼吸音だけ。
「早く目を覚ましなさいよ。退屈じゃない」
静かな部屋。
救急車で付き添って、泊り込む準備だけして舞い戻って。
変わらない様子で眠り続けるその姿。
時計の秒針が、やけに響いて聞こえる。
まだ、数時間しか経っていないんだ…。
とても長い時間が経ったかのように、時計が進むのが遅い。
いつかは明けるだろう夜。
夢の中のように、隣で眠る人。
「キョン…」
返事のこない自分の呼び声が、やけに虚しかった。
* back *
ハルヒ視点でシリアスです
「消失」の時、眠っているキョンを病院で見守ってるハルヒさん
…これを書きつつ、この時古泉君は神人退治大変だったのかなぁとかしみじみ考えてしまいました…
私の中のハルヒは、不満を暴れさせるどころか呆然としていたのでおだやか(?)な感じだったのですが…